買ったあとに残されている手段は、多くない
利回りを上げる方法は、原理的には3つしかありません。
- 安く買う
- 収入を増やす
- 支出を減らす
1は購入時点で終わっています。2は家賃の値上げか空室を埋めることですが、家賃は周辺相場が決めるもので、思い通りにはなりません。
つまり保有中の不動産投資家(大家)に残されているのは、実質的に「支出を減らす」と「空室を埋める」の2つです。この記事では、その2つを分解します。
表面利回りと実質利回りの差は、どこから来るのか
物件情報に載っているのは、たいてい表面利回りです。
| 計算式 | |
|---|---|
| 表面利回り | 年間家賃収入 ÷ 物件価格 |
| 実質利回り | (年間家賃収入 − 年間経費)÷(物件価格 + 購入時諸費用) |
この差を生んでいるのがランニングコストです。 一般に、家賃収入の20〜30%程度が経費として出ていくとされます。
仮に家賃7万円・1,000万円の物件で見てみます。
| 項目 | 年間の目安 |
|---|---|
| 年間家賃収入 | 840,000円 |
| 管理委託費(家賃の5%前後) | 約42,000円 |
| 固定資産税・都市計画税 | 物件により変動 |
| 火災保険・地震保険 | 物件により変動 |
| 共用部の水道光熱・清掃 | 物件により変動 |
| 原状回復費(4年に1回・15万円と仮定) | 約37,500円 |
| 入居者募集にかかる費用 | 広告料・仲介手数料など |
| 空室期間の家賃損失 | 1日あたり約2,300円 |
※いずれも仕組みを説明するための試算です。実際は物件・地域・築年数により大きく変わります。
表面利回り8.4%が実質で6%台になる——その差は、こうした項目の積み上げです。
削っても影響が出ないコスト、削ると跳ね返るコスト
経費を減らすとき、すべてを一律に削るのは危険です。 支出には性質の違う2種類があります。
削っても影響が出にくいもの
- 相見積もりを取らずに発注していた工事 — 同じ内容でも、比較すれば適正だったと確認できるか、より条件の良い選択肢が見つかるかのどちらかです。比較すること自体にコストはかかりません
- 保険の重複 — 火災保険の特約が他の保険と重複していることがあります
- 使われていない設備の維持費 — 停止したままの共用設備など
- 過剰なグレードの材料 — 賃貸の原状回復では量産品クロスが標準です。目的なくグレードを上げていれば見直せます
削ると跳ね返るもの
- 入居者を決めるための費用 — 広告料を絞れば、決まるまでの期間が延びます。1か月空けば7万円の損失。広告料を数万円削って空室が1か月延びれば、確実に損です
- 設備の予防的な交換 — 給湯器やエアコンは、壊れてから交換すると入居者の不満と緊急対応費が同時に発生します
- 原状回復の品質 — 粗い施工は入居後に剥がれや不具合として戻ってきます。是正の費用と手間を足すと、最初から丁寧にやったほうが安いことが少なくありません
- 工期 — 安いが3週間かかる見積もりと、少し高いが1週間で終わる見積もりでは、後者のほうが手残りが多いことがあります
削るべきは「金額」ではなく「無駄」です。 同じ結果がより低いコストで得られるなら削る。結果が変わるなら削らない。この線引きが利回りを守ります。
いちばん大きいのは、たいてい空室期間
経費の項目を細かく詰めるより、空室を1か月縮めるほうが効くことが多い——これは覚えておく価値があります。
家賃7万円なら1か月の空室=70,000円の損失。管理委託費の年額(約42,000円)を全部ゼロにしても届きません。
空室期間を縮める打ち手は、大きく3つです。
- 退去予告が出た時点で動き始める — 退去日を待たずに現況を確認し、工事の段取りを組んでおく。退去日から動き出すのと、退去日に着工できるのとでは1〜2週間違います
- 原状回復の工期を短くする — 廃材が出ない工法を選ぶ、複数業者に分けず段取りをまとめる、など
- 繁忙期(1〜3月)を外さない — この時期に間に合うかどうかで、決まるまでの期間が大きく変わります
1〜3はいずれもお金ではなく段取りの問題です。追加の支出なしで効かせられます。
原状回復が、この2つの交点にある
ここまでを整理すると、保有中にできるのは「無駄な支出を削る」と「空室期間を縮める」の2つでした。
原状回復は、その両方に同時に効きます。
- 金額を見直せば、退去のたびに繰り返し効く支出削減になる
- 工期を縮めれば、そのまま空室期間の短縮になる
- 仕上がりが良ければ、決まるまでの期間が短くなり、長期入居にもつながる
しかも退去は必ず来ます。一度基準を作れば、その効果は保有している限り繰り返されます。
詳しくは不動産投資家にとって、原状回復がなぜ重要なのかで整理しています。
まとめ
- 買ったあとに残された手段は「支出を減らす」と「空室を埋める」の2つ
- ランニングコストは家賃収入の20〜30%程度。ここが表面と実質の差になる
- 削るのは「金額」ではなく「無駄」。入居付け・設備の予防交換・施工品質・工期は削ると跳ね返る
- 空室1か月=家賃1か月分。細かい経費削減より効くことが多い
- 空室短縮の打ち手はお金ではなく段取り(早く動く・工期を詰める・繁忙期を外さない)
- 原状回復は支出と空室の両方に効き、しかも繰り返し発生する
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※本記事の金額・比率はいずれも仕組みを説明するための一般的な目安・試算です。物件、地域、築年数、契約条件により大きく変動します。投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の事業者を評価・批判するものではありません。